医療機器メーカーと病院の現状

切込隊長さんのblogでも言及されていますが、いわゆる「病院情報システム」の国内における市場規模は6,000億円程度であると見込まれています。

「病院情報システム」には、電子カルテ、各種医用画像のモニタ診断(レントゲン写真などをJPEG形式の電子データに落とし込み、パソコン上で診断を行う)システム*1、PACS(Picture Archiving and Communication System)、レセプトシステム(いわゆる会計システム)や、病院−病院間の医療情報システムの連携などが含まれます。

その中で、e文書法の制定以降、「電子カルテ」の導入による医療サービスの飛躍的な向上(医療費削減の二次的な効果も含まれる)は計り知れない、と大きな期待が寄せられているようですが、実際にはそうでもないようです。

先日、とある外資系医療機器メーカーの方とお話させていただく機会があったのですが、「電子カルテ」を導入したからといっても、医療サービスが必ずしも良くなるとは言えないということらしいのです。

現状の紙カルテは、診察した医師の独自の判断に拠るところが過分にあり、しかもドイツ語などでなぐり書きしている程度のシロモノですから、カルテの情報共有なんてとてもできるような状態ではないことは、素人判断でも分かります。

既存の紙カルテを単に電子カルテに置き換えたところで、その状況はなんら変わらないということらしいです。

たとえば、簡単な例として、患者が「風邪かなぁ?」と思って近くの病院に行ったとすると、経験の浅い医師(インターンなど)であると、経験不足および診察時間がもったいない(かどうかは分かりませんが・・・)などの理由により、患者の自覚症状に基づく簡単なヒアリングだけで、「まぁ、これはただの風邪ですね」と診断されて適当な薬剤を処方されてはいおしまい、ということが多々あります。

ところが、これが実は風邪ではなくてインフルエンザであったとすると、いわゆる「医療過誤」にあたります。

実は、「電子カルテ」のヒアリング項目には、風邪かインフルエンザかを見極める判断基準がないという恐ろしい実態を医療機器メーカーの方から聞きました。

また、医療機器メーカーの方曰く、「論文を多く発表している著名な医師がいるからといって、必ずしもそれが患者にとって良い病院だとは限らないんですよ。実際にその医師が診察にあたることは極めて稀なんですから。」ということらしいです。

実際私も、数年前に「これはただの下痢かなぁ?それにしても熱が下がらないし、もしかしたら盲腸かも?」と思って、近くの病院に行って診察をしてもらったら、「これは症状からして腹膜炎の疑いがあります!」と言われて、「えぇ・・・、どうしよう!」とパニクったことがありました。

診察していただいた病院はいわゆる「町医者」だったので、紹介状を書いてもらって少し離れた総合病院に入院するはめに陥ったのですが、そこで精密検査などを受けた結果、単なる「大腸炎」だったのです。

*1:これは、DICOM(Digital Imaging Association of Radiological Systems):「米国放射線医学会(ACR)と米国電気機械工業会(NEMA)により制定された、ディジタル医用画像の通信規格」というプロトコルにより構築されている